退職前に、セミリタイアブロガーさんの記事を読ませていただいた。特にAさんという50代女性のブログが大好きで、貪るように読んだ(ファンの多いサイトだったが、2年前に閉鎖された。残念!)。
退職後の小さな暮らしをつづるAさん
Aさんはバリバリ働くキャリアウーマンだったが、40代前半で完全リタイアした。以来知人から勧められても全く働かず「とても贅沢な時間を過ごした」と振り返っている。もちろん順風満帆だったわけでない。現役の時は年間400万円だった支出を、苦労しておよそ150万円までに減らした。「解消するストレスがなくなったので、ブランド品や海外旅行に魅力を感じなくなった」と語っている。
退職後に投資を始めるAさん
Aさんは「絶対これだけ貯蓄があれば大丈夫」と退職前に何度も計算した、という。しかし途中から苦しくなった。「じわじわと減っていく貯蓄額を見るのはなんともいやなものです。これは例えば1億円持っていても同じじゃないかな」と書かれていたと思う。しかしそこで「働く」という選択をせず、投資に目をつけたのだという。
当時リーマンショックもあり、一時は財産がごっそり減り、混乱のあまり財産の7割を投資にまわしたこともあったらしい。しかし退職から10年経ったら、まったく財産が減っていなかったため「まったく働いていないのに、と狐につままれた気分になった」らしい。
私が投資を始めた理由
実は私もAさんとパターンが似ている。現役の時はまったく投資はしていなかった。
「お金が減るのが怖い」「給料があれば十分」と思い、投資書籍は読んでいたもののそこで止まっていた。
退職した後は、サラリーマンではなくフリーでお仕事をしようと思っていたのだが(組織の人間関係につくづく嫌気がさしていたので)、すぐに母が倒れたため、無職のまま介護生活が始まった。
お金が使えなくなる恐怖
退職後に「退職金」「積立財形」が、間隔をあけて振り込まれ、通帳の額はかなり大きくなっていたのだが、ここから私のお金の不安が始まった。
わずかなお金ですら、使えないのだ。スーパーに行って158円の牛乳を買うのにも躊躇する。嗜好品のチョコ一つも買えない。ティッシュを買うにも胃が痛む。
「これで、お金が減る。お金が減る。お金が減る」とじわじわ追い詰められるのだ。生まれて初めて、お金に恐怖を感じた。
思い返せば、社会人一年生の頃は本当に安月給で、貯蓄も少なかったが、お金への不安はなかった。それは増える要素や可能性があったからだ。一方、貯蓄の食いつぶしはどんなに資産があっても減る要素しかない。Aさん指摘のとおり、1億円あっても恐怖を感じると思う。
令和元年4月にお勤め開始、6月に投資デビュー
母が亡くなる直前に新しい仕事を見つけ、働き始めた。やはりこじんまりでも、収入があると落ち着く。
この職場がとても良かった。何よりイヤな人がひとりもいない。セミリタイア後の仕事に、やりがい、スキル向上、自己成長、給料の多寡などは求めていない。人間関係が良くて、通勤が楽で、ストレスが少なく、ほんの少し社会の役に立てれば何でもいい(☜この条件を満たしている)。今もここで楽しく働いている。
働き始めて思った。「第二の仕事で得た収入を、投資してもいいんじゃないかな?」
もともと、退職したら「昔の常識ではやれなかったことをやってみよう」という計画があったのだ。そこでSBI証券に口座を開設し、つみたてNISAを始めた。
やっているうちに面白くなり、分散しながら退職金を全部インデックス投資にまわした。令和2年3月にコロナショックがあり、一気に数百万円のマイナスになったが、不思議と心は平穏だった。
―――貯金の取り崩しは、まったく増える要素はない。投資は一気に減ることがあっても常に増える要素をはらんでいる。投資の方が面白い!
多分、先述のAさんも同じ感覚だったのだろうと推測する。
貯金取り崩しは良き経験
自分が「働かず」「貯金を食いつぶす」に耐えられない性格だとわかってよかったと思う。人間関係さえ穏やかなら心身を蝕まない程度に働きたいし、お金は世間にまわしていきたい。自分もお金も動かすほうが好きだ。
投資を始めて2年。2年で「生活費3~4年分」くらいの貯蓄ができたが、これがマイナスに転じることもあるだろうな、とのんびり構えている。
あの「貯金をじわじわ減らす」おそろしさに比べれば、「増えたり減ったり」の投資はまったく怖くない。それに経済をまわせば、他人様の役にも立てるから、うれしい。
まとめ
今は、普通にお金を使えるようになった。高額検査(がん検診など)もためらいなく申し込める。欲しいものもたいてい買える(あまり物欲がないから)。
振り返ればいろいろ回り道をしているようだが、全部ひとつなぎ。退職も無職も看取りも再勤務も投資デビューも、全部つながっている。
そのときは大変でも、少し遠い先を見ると「幸甚な結果につながった」と腑に落ち安堵することが多い。だから最近は、心配することも悩むことも少なくなった。
だから、未来への不安はあまりない。今が一番幸せ。毎日、そう感じている。