あらゆる物質は毒である。
あらゆる物質は毒である。
毒になるか薬になるかは、用量によるのだ。
特別展「毒」 パラケルスス(スイスの医学者)の言葉より
抗がん剤は猛毒
「毒」展には、監修の方々のコメントも掲示されている。
堤さんの抗がん剤のくだりに衝撃を受けた。点滴準備をする看護師は、完全防備をする。つまり、猛毒ゆえ、目や鼻や口や皮膚から入らないようにガードする必要がある、ということだろう。抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞までアタックする強烈な毒とは知っていたが…。
――読み返すと、この文面には違和感がある。堤さんは冒頭で「毒は薬です」と言い切っているのに、最後で「がんを制するためには毒に近い強力な薬が必要なのだなと感じました」とトーンを下げている。整合性が取れていないのは、「この展覧会は子どもから高齢者まで、いろいろな層が観に来るから、もっと表現をやわらかくしてほしい」と主催者側から横槍を入れられたのではないか(と推察した)。看護師の皮膚に付着するのも「あまりよくない」ではなく「危険」なのだろう。
がんを制するためには、強力な毒が必要なのだ――と書きたかったのだと思う。
毒にならないものはない
パラケルススの主張にひどく共感する。
大事なものを列挙すれば、それらすべてが毒にも脅威にもなり、自らを蝕む要因になると納得できる。
大事なもの、かけがえのないもの。家族、友人、恋人、財産、健康、仕事、愛、休養、勉強、知識、才能、美、食料、水、陽光、大地…と書いて行くと、どれも脅威になると気づくのだ。
この世に、毒にならないものなどない。
毒の強さの比較
毒展の「毒の強さの比較」が興味深かった。表の上にいくほど、毒性が強い。
最下位の青酸カリが弱毒に感じる不思議。脳がバグる。
最強毒のポツリヌストキシン。美容整形などで「ポツリヌス注射」として活用するなど、猛毒を上手に利用することもできるわけだ。
まとめ
かけがえのないものほど、毒性は強い。
裏を返せば、毒性の強いものほど強烈な効果を期待することもできる、ということでもある。
いずれにせよすべてのものを適量にし、適切につきあっていくことが肝要なのだ。
この世のすべては、毒なのだから。